辞めるべきか辞めざるべきか

 妊娠がわかって、一番悩んだのは仕事のこと。
 妊娠を上司と同僚に報告すると、すぐにこれまで来ていた着物の着用を免除してくれたり、重いものを持たないように助けてくれたりと、本当に良く気遣ってもらい、ありがたかったです。妊娠がわかって職場に報告するまでの間が一番不安でした。仕事は多少の重いものを持つことはあたりまえだし、一日に多い時は10時間近く立ちっぱなしの歩きっぱなし。妊娠初期の流産の危険性について知れば知るほど、不安は募りました。のびた並みにいつでも良く眠れる私が、まさか夜眠れなくなるとは…。
 働き始めてちょうど1年くらいだったのですが、産休育休はしっかり取れるということでした。通常産前8週から産後は最長2歳の誕生日まで。ただし、母体の状態に応じて、もっと早くから病休のような形で産休に入る人も多いとのこと。経済的にかなり大きいメリットです。育休を取った後で退職と言うパターンはこちらでは多いらしく、同僚たちは私もそうすればいいと勧めてはくれたのですが…。初産の妊婦としては決して若くないこと。勤務の時間帯を考えて、まず産後復帰はできないこと。いつ、どれくらいひどいつわりが始まるかわからず、これまでと同じように働ける自信が持てなかったこと。シフト制で働いているため、私が突然病休のような形で休みに入ると、新しい人がすぐに入ってこず、多大な迷惑をかけるであろうこと。迷惑をかけることが自分に跳ね返ってきてストレスになることなどを考えて、辞めることにしました。もし、事務職だったら何とかがんばって続けることを選択したかもしれません。
 最初は、産後復帰するつもりが無いのに育休を取るなんて日本では顰蹙ものだな…と思ったり、周りの人に迷惑をかけるから自ら辞めるという考え方は、権利を無理に主張しない日本人の美徳だと思ったりしたのですが、自分が迷惑を被ることを分かっていても、育休を取ることをずっと一生懸命勧め続けてくれた同僚を見て、方向性が違うだけでこちらの文化も素晴らしいと思うようになりました。他人にも自分にも厳しいか、他人にも自分にも優しいかの違いなら、後者の形に日本もなったらいいのかも。